おはようございます。ヒミツキチ森学園のあおです。
さて、今日はヒミツキチ森学園で行う個別最適化・自由進度学習についてご紹介していこうと思います。
見学者に一番驚かれているのが、毎日、自由進度学習でブロックアワー(基礎学習の時間)が行われているところです。
もちろんまだまだ完成された形ではなく、試行錯誤中ですが、一人一人が自分の学びに向き合って取り組んでいる中で、少しずつ成果が上がってきています。
その雰囲気、学びに対する熱量と普段のエネルギーを見学で感じて、入学を決意していただく方が多いです。
- 個別最適化の学習って何?自由進度学習って?
- ヒミツキチ森学園ではどんな風に取り組んでいるの?
- GIGAスクール構想に取り組む学校の中のヒントを得たい!
あお
さて早速見ていきましょう!
目次
個別最適化の学習って?自由進度学習って?
聞き慣れない言葉が並んでいるけど、どんな意味なのー?
まーくん
あお
一つひとつ説明していくね!
「個別最適化の学習」の意味は?
文部科学省から出された「Society 5.0 に向けた人材育成」には、「公正に個別最適化された学びを実現する」と書かれています。文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」の目的は「誰一人取り残さない、公正に個別最適化された学びの実現」とされていましたが、その後文言が変わり、「誰一人取り残さない、個別最適化された学び」という表現が増えてきました。
一人ひとりの子どもに最適化された学びを提供するということが、GIGAスクールの大きな目的なんですね。
従来の一斉授業で、集団としての学びのなかで、個別に対応するのではなく、最初から個別に最適化された学びを届けることの意味合いが強いのだと思います。
それが、1人1台のタブレットだと実現するわけかー
まーくん
「自由進度学習」の意味は?
こちらについては、「単元内」がつく事例については研究も進められています。
2014年の論文です!
ボク自身も6・7年前ぐらいから、単元内自由進度学習については、主に算数について取り組んできました。単元の中で、大切なことをシートにしつつ進めていましたね。2014年の実践がこちらです。
6年生の算数はほぼ全単元で、行っていました。
自由進度学習は、さらにそれを単元内に限らず、拡げた形になります。
こちらも公立の学校で実践を重ねてきましたが、ヒミツキチ森学園ではイエナプランのブロックアワーの時間と絡めて、より可能性を感じる時間になっています。
「誰と、いつ、どこで、何を、どのように」学ぶかも全て自由にしています。
そうすることで、自分のペースでだけではなく、自分の強みを生かして進んでいく学習を可能にしています。
この辺りの書籍も詳しいです!
ヒミツキチ森学園の個別最適化・自由進度学習の実際
続いて、ヒミツキチ森学園では、実際にどのように学習が進んでいるかを説明します。
- 「学びの地図」という週の計画表を使って、ブロックアワーの学習内容を子どもたちが計画
- 主に国語・算数の学習が中心、3年生以上は理科・社会もプロジェクト学習と連携して、個別に時に集団で学ぶ
- タブレットを使った学習が中心だけど他の方法も選択することができる
- プロジェクトアワーの探究学習と行き来して、学びの相乗効果が生まれる
学習内容を子どもたちが計画する
こちらがの学びの地図です。
1・2年生が多いボクらの学園では、次のようなスモールステップで計画を立ててきました。
- 学習のめあてを立てる (ていねいに書く・このページまで終わらせる など)
- 学習内容を選択する (何をするかを選択する)
- グループリーダーが出す課題に合わせて、ブロックアワーのどこで何を学ぶか選択する
- 「ラーニングプロジェクト」や「ほんと作家の時間」をどうブロックアワーに入れるかを計画する
- プロジェクトアワーの課題なども、ブロックアワーに入れるようになる
- 水曜日の時間割を自分で組み立てる
- 自分の時間割を自分で立てる(4〜6年生クラス)
今年入学した1年生も、今③〜④のところにいます。
計画も最初は30分以上かかっていましたが、毎週毎週積み重ねることで、短い時間で自分で計画を立てることができます。グループリーダーは、課題の時間配分など、計画の段階で声はかけますが、基本的には子ども達に任せます。
あお
もちろん計画の段階では、対話を大事にして一緒に決めていきます。
自由にやらせてもできるようにはなりません。子どもが自分の学びで舵を取れるように、丁寧に対話しながら計画をしていきます。対話に時間をかけて、計画の立て方、振り返り方を丁寧に教えていくというのは、自由進度学習の肝になります。
1年生でもここまで自分の学びを立てられるんだ!というのは手応えとしてあるね!
まーくん
ipadを使い個別最適化しながらも、必要に応じて一緒にも学ぶ
Ipadを使いながら学んでいきます。
かず(算数)では、基本的にはeboardを使用して進めています。
eboardが最適かわかりませんが、あまりに作り込まれた算数専用教材でも、学びは止まってしまうっていうのが実感なんです。
eboardだと、プリントアウトしたものと動画教材とをリンクさせながら進めます。ipadだけで学ぶ子もいれば、プリントと併用して学ぶ子もいるんです。
あお
ICT教材を生かせる「余白」が存在していて、使いやすいんです!
これって実はすごく大切なことなんじゃないかと思っていて、全てタブレットの中で完結せず、先生や友達と程よく繋がりながらできる教材が、個別最適化には向いているなぁと感じています。
そこでの先生の役割はコーチになります。ティーチングよりもコーチングをしている時間が長い。
さらに、集団で学ぶ学びも大切にしています。1年生の初期や、長さやかさの学習では、実際に手を動かすことでの学びを大切にしています。
みんなで学ぶことが新鮮で楽しい!ってよく子どもたちが言うよね。
まーくん
そうやってipadでの個別最適化を基本としながらも、集団で学ぶことも大事にしています。
むしろ個別化の自由進度がしっかりとできているからこそ、集団にして学ぶことの価値が上がってきているように思うんです。「初めに個別ありき」、最近の発見です。
理科や社会は、プロジェクトの学びと連携して学ぶ
理科や社会については、プロジェクトの学びと連携して行います。
例えば、「命のつながり」をラーニングプロジェクトで学んでいるので、4年生の子どもが、5年の理科「人間の体」について個別で学習している…などです。
さらには、「ことば・かず」でも学習内容を決めるときに、今学んでいることからの選択を大事にしています。
ラーニングプロジェクト「植物の恵み」の時には、「作家の時間」で学園にある植物図鑑をみんなで作ったのですが、その際に植物の丈の長さを測るから、「長さ」を学習するなど、ひとつひとつの学習に意味を持ちながら学べる工夫を考えています。
あお
つながりの中で学びは深まる…そう考えているからです。
最近では、ラーニングプロジェクトの学習・作家の時間なども、ブロックアワーの中に計画できるようになってきました。
今自分がやるべき課題は、今週の課題と照らし合わして、ブロックアワーの時間に入れることを勧めています。
ブロックアワーの時間に、作家の出版課題をやっていたり、誕生日催しの司会の原稿を作っていたり、誕生日の子へのお手紙を書いていたり…
ヒミツキチ森学園の教科が、何を学ぶかではなく、どう学ぶかでわかれているため、個別進度学習との相性が非常にいいんです。
個別最適化・自由進度学習での子どもたちの成果
実際にこのような学習を進めることで、どんなことが起きるのでしょうか。
1つ挙げられるのは、比較すること・されることがなく、自分のペースで学べるということです。
個別最適化の学習では、隣の人と同じところを必ずしも学習していない状況が多く生まれます。集団で学ぶ際にも、ミニレッスンは全員で、あとは自分のペースで学ぶが基本なので、比較したりされたりすることがありません。
できていないことでの個人の自己肯定感の喪失は少なくなり、自分のペースで確実にできることを増やせるようになります。
作家の時間に「ヒミツキチでの学び」を書いている子がいて、一番に挙げていたのが、この「自分のペースで学習できるから焦らない」ということです。
そして意外と学ぶ場所や環境が大事だということがわかりました。
ヘッドホンをつけて音を遮断することで集中する子もいますし、縁側の暖かいところで、お日様の光を浴びながら九九を暗唱している子もいます。
中には椅子をなくして、たちながら学習に臨んでいる子も。
場所を選べるということは学習する環境を自分でつくるということ。
これは子どもたちにとって大きな学びになります。
また、「自由にやって学習進度に遅れていかないのか」という疑問があるかもしれませんが、むしろ個別化することで、学習ペースは早まります。
学びの概念を獲得している子は、説明はそこそこに問題を解き始めます。そうやってわかっていることを、1からやる必要はないので、ぐんぐん進んでいきます。
結果的に1年生が3年生の算数を学ぼうとしていたり、次の学年の漢字に進んでいることが多いなど、学習進度はむしろ早くなっています。
最後に、個別最適化された学びはオンラインの学習にも対応しやすいです。ヒミツキチ森学園では、体調以外の理由についても、オンラインでの学びの選択を可能としています。
あお
コロナで自宅学習となった4・5月のオンライン授業で、その素地を整えることができました。
そうなると自然と、オンラインで学ぶためには、家の学習と学校での学習がつながっていることになります。
ヒミツキチ森学園に宿題はありませんが、
「2年生のかず、暇だったから全部やっちゃったよ!」
「漢字、終わらせちゃった!」
子どもたち
などといった、自主的に取り組んで来る子も、ちらほら現れました。
今年に入ると、夏休みにも同じように自分たちで計画を立てて学んできたのですが、「テキスト全部終わらせた!」の子が多く、夏休み前までに1年生の学習を全て終わって、2年生の学習に進んでいる子がいます。
さらには、プロジェクトアワー(探究)がもたらす学びが非常に大きいです。
プロジェクトアワーでは、探究学習を行なっています。
例えば今であれば、猿島で企業さんとコラボした企画を展開しています。
こういう規模の探究になってくると、一人じゃ何もできないんですよね。協力しないと共創しないと太刀打ちできない。
そして自分の弱みじゃなくて、強みを最大限発揮してそこに挑んでいくようになる。
答えのない問いに対して、試行錯誤したり共創したりした経験から考えると、ブロックアワーの学びにそれが還元されているんです。
あお
その二つの学習の相互作用が、子どもたちの学びを爆発的に高めています。
個別最適化・自由進度学習における先生の役割
進めてみて実感する、今後の先生の役割は次の通りです。
- ケアする
- 目標を立てる・振り返る
- 見守る・観察する
従来の「教える」に加えて、このような役割が大きくなってくるのを実感しています。
個別最適化の学習では、自分自身のモチベーションの管理なども子どもたちが主導になります。小学生の子どもたちにとって、なかなかそれは難しいのです。側に寄り添って、励ましたり、できたことを認めたり、そういうケアとして寄りそう先生の役割が、今後大事になります。
ケアがなくては、個別化は孤立化になります。どう学びに寄り添えるか、かなり大事だと感じています。
また、週の目標を立てる時には、コーチの役割も担います。
先週の振り返りから、どのぐらい進みたいのか、自分がやってみたいことは何なのか、一人一人に合わせてコーチングを進めていきます。
目標って一人じゃ立てられないものね!!
まーくん
子どもたちが自ら計画を立てられるように、長期的な視野で一緒に計画を見ていく役割は大事になります。
また、振り返るときに一緒に対話することも、自由進度学習を支える鍵です。
ここは時間をかけていて、通常の40分を使っても時間が足りないため、昼食時間もちょっと声をかけて振り返りの対話を一人ひとりに続けています。
今週を終えて、
- 現在地はどこなのか
- 何ができて何ができなかったのか
- こちらから見ていて気づいたことは何なのか
- 次の週にどんなことを大事にするのか
書けなくても、対話の中でそれを見つけていきます。問いをこちらが出せば、1年生でもたくさん話してくれるんですね。
計画▶︎振り返りの時間のコーチングは非常に大事です。
そして教えるというより、一緒に考える役割がぐっと増えました。
教えたり丸をつけたりする時間ももちろんとりますが、子どもたちを少し遠くから観察することを大事にしています。
- 今、この子は何を考えているのか
- どこにつまづいているのか
- 一人で乗り越えるのを待つべきか
- どんな助けがあればいいのか
そんな想いから、よく観察することが増えました。
先生の役割も、学びによって変わってくることを実感しています。
観察後の記録の取り方も変わりました。
子どもができたかできなかったかという単純な数字だった公立教員時代。
今では子どものプロセスを丁寧に記録しています。
- 取り組み方はどうか
- 取り組む環境はどうか
- 強みとあった取り組みをしているか
- 子どもの感情はどうか
そんなところを見ながら、丁寧に記録し、共有しています。
個別最適化、自由進度学習の課題は?
現時点での課題としては次のことが挙げられます。
- 学習内容は十分か、確実な理解に向けてできることは?
- グループで学ぶタイミングは、どこが最適か?
- どこまで任せるか
単元を学習したかで判断しているのではなくて、子どもが理解したかを確かめながら進んでいます。「こなしたかではなく、理解できたか」ここにこだわっています。
理解したものは確実に忘れていくので、どのタイミングで学習理解度をどう確認するか、ここが次の課題になっています。
今では、eboardや漢字はチェックテストを使いながら行っています。
自分の学びの現在地を知るために、定期観測の視点も重要だと考えているんです。
あお
ここ、次の手を打っていきます!
また、グループで学ぶタイミングはいつも悩むところです。
子どもたちが自分の学びにノっているときに、呼んでしまっていないか。1回学習してしまったものは、モチベーションが下がらないか、そんなところも注目しながら進めています。
2021年度からはテーブルグループを利用しています。
月曜日と木曜日は、3学年混ざったテーブルグループでブロックアワーの時間を過ごしています。こうすることでわからないところを上の学年の友達に聞くこともしやすくなりました。
どこまで任せるかというのも課題ですね。
基本的に立てたペースで学習していって、週の振り返りまではペースに声かけをしないようにしています。
あお
ついつい、口うるさくいってしまいそうになるのですが…
でも、自分でたてた計画を自分で振り返り、気づくから意味があるのであって、先生が先回りして気づいてアドバイスをすることはあまり価値を感じません。
この辺の辛抱強さを身につけたいです。
その週の学習が終わることに意味があるんじゃなくて、うまくいかないことも大事なプロセスです。
まとめ GIGAスクール構想の方向性
今日は、個別最適化と自由進度学習について、お話しさせていただきました。
文科省が提案する「GIGAスクール構想」に向けて、現場の先生たちが今取り組んでいるところです。
一人1台のタブレットでの学習は、これまでの学習を一変させる可能性を秘めています。しかしながら、「一斉授業の中でそれを使おう」とする先生の授業観も同時に変化を求められているのだと思います。
個別に学びが最適化されるために、タブレットを使う。あくまでICTはツールだと思っています。ipadを使ってみて生まれた問題を解決するのではなく、望む姿を大事にしてそのための道具の一つとしてどう活用していくか、それこそが大事な気がします。
あお
今必死に仲間が取り組んでいるので、心から応援していますし、何かできることがあれば…と思っています。
ワクワクしながら学びに取り組む子どもたちが、増えていきますように。
また、自由進度学習という名前や手法が一人歩きしちゃうのもあまり良くありません。あくまで考え方であり、実践としてやればいいものではないんですね。
- 一斉授業じゃなくて一人ひとりに合わせるにはどうするか
- 子どもが待つことなく学習に向き合うにはどうするか
- もう知っていることがあるならそれをどう生かせるか
そんな視点でもう何十年も前から実践されてきていることなんですね。
最近のブームじゃないんだ!?
まーくん
あお
それを続けていく限り、実践で終わって見向きもされなくなっちゃうのが怖いのよ。
考え方であり、自由進度学習をやっていればいいというもんじゃありません。
自由進度学習で子どもに力がついているのか、自由進度学習にそぐわない子がいたらどうすればいいのか、それらをシビアに見ながら、取り組みを重ねていく必要があるのです。
そんな想いでヒミツキチ森学園で毎日に取り組んでいます。
あお
それでは今日も良い一日を!
ヒミツキチはさらに一歩先に学びを進めます!