おはようございます。
ヒミツキチ森学園に来てからの方が、学習に関して深く深く学び続けているあおです。
さて、今日は『学び合い』「自由進度学習」の先にある自立学習の実践と課題をテーマにお話しさせてください。
この記事で言いたいのは、
『学び合い』「自由進度学習」の限界と、自立学習の実践から見えてきた無限の可能性です。
大きくでたねぇ。
まーくん
あお
実践し続けているから見えてきたことをお話しできればと!
どこをゴールにするかが違うことで、子どもたちの見えてくる姿に未来を感じているのです。だから二つの学習法の先にある「自立学習」について今日は詳しくお伝えします。
ヒミツキチ森学園は、神奈川県葉山町に2020年に開校したオルタナティブスクールです。小さな学校ですが、イエナプランや学習指導要領などをミックスした学びを展開しています。
目次
『学び合い』「自由進度学習」はプロセスの途中
さて、自立学習の前に、『学び合い』や「自由進度学習」について触れておこうと思います。
最初に言っておきたいのは、これらの実践に、ボクも5年ずつぐらいどっぷりと浸かりながら取り組んでいました。
あお
今でも素晴らしい実践だと思っています!
ただ、これが学習の理想の形(最終形態)ではないよなぁということもわかったのも事実です。
『学び合い』は一つの考え方として確立していますし、「どの子も見捨てない」という概念は素晴らしいと思います。ボク自身も社会科の全単元を1年間『学び合い』でやるなど、真剣に取り組んでみました。
その結果見えてきたのは、これはプロセスの途中なんだということ。
黒板の課題に向かって、全員が自分たちで課題を解決する学習は、プロセスとしてはありですが、これがゴールではないでしょう。
もっともっと学びとは自由なもので、一人でじっくり深めたい時もあれば、全員で取り組む時もあるはずです。
『学び合い』の実践者の方も、全部をそれでやろうとしていないとは思いますが、数年やるうちに、その先にあるのが「自由進度学習」ということがわかりました。
こちらにまとめてあります!
学校の中では単元内自由進度学習からスタートします。徐々に単元も取っ払ってしまっていいのでは?と考えるようになり、単元を超えた学習も実践していきました。
自由進度学習は一斉授業をやってきた子から見ると大変魅力的に思えるのです。他の子を待たなくていい、自分のペースで進める、これはいいことです。でも同時に、一斉に進むことの価値も感じている子が多いなぁというのが印象です。
途中からは、クラスの中で自由進度と一成授業を子どもたちの希望で分けて授業してみたこともありました。算数の少人数で実践するなど、いろんなバリエーションを試しました。
ここで見えてきたのは次の3つの問題点です。
- 子どもの学びについて、単元内の各項目を終えたかどうかでしか追えていない
- そもそも自由なのは進度だけでいいのかという疑問
- 集団の学びに引き上げるタイミングがいつかということを先生が見極めていない実践が多い
ということ。
ボク自身も、子どもたちの学びのどこを見ればいいのか、まだまだ甘かったなぁと思います。
それぞれに問題点があるんだね。
まーくん
あお
自由進度学習の先にあるのが、イエナプランでいうところの自立学習です。
では、自立学習とはどんな学習かをみていきましょう。
自立学習とは何か
さて「自立学習」についてです。
あお
イエナプランでは、ブロックアワーの時間に、この自立学習が展開されています。
自由進度学習では名前の通り、自由なのは、「進度」が中心でした。
しかし自立学習では、学習内容(教科)も、場所も、学び方も、自由になります。「自由」とは自らに由ること、つまり、自分に委ねられているということです。
自立学習では、インストラクションの時間もしっかりと設定しています。
ヒミツキチ森学園でも、自立学習中のインストラクションはこれぐらいあります。「必ず参加」と、「自由参加」を分けていて、自分が必要なインストラクションを選んで毎週参加しています。
つまり集団での学習が短く構成されながらも、他の時間の学びは自分たちに任されているのです。
インストラクション×自分で学ぶ学習をしている子が、あちらこちらにいる形です。
この学習のためには、ICTが必要です。さらにはAIによる分析も必要になります。
e-boardのこともこちらで!
先生による、子どもたちの幅広い見取りが必要になります。自由には責任も伴いますが、最初からうまく学びを回せる子は少ないです。だからこそ、自立学習では、先生が持つ役割というのが非常に重要になります。
それではここからはヒミツキチ森学園が実践している「自立学習」を1つの形として紹介しましょう。
ヒミツキチで展開する自立学習の実際
あお
さて、それでは試行錯誤中の自立学習の実際を見ていきましょう。
- ビジョンの軸
- 学びのツールの軸
- 関係性の軸
- 境界線の軸
- 学びの把握の軸
5つの軸で見ていきましょう!
まーくん
ヒミツキチ森学園では、午前中の2時間が自立学習(ブロックアワー)の時間です。1時間×2の授業時間の中では、自分で進む学習時間とインストラクションがバランスよく入っています。
あお
まずはカリキュラムがどのように展開されているかを見ていきましょう。
自立学習のカリキュラム
4年目の今年度からは、上のように3つのカテゴリに分かれて学習をしています。
「言葉をあやつる」
「思考を拡げる」
「五感で表現する」
の3つですね。
教科はないのね!
まーくん
あお
それぞれのペースで学んでいるのと、まなびぃという複合された学習プロジェクトを展開しているので、教科とする必要はないんだよ。
ビジョンの軸
学びの知図 画像挿入
ある週のインストラクションを示した表を再度載せます。
みんながこの表を見ながら、月曜日に1週間の学習計画を立てます。
前の週の振り返りから、今週取り組む課題は一緒に決めているので、あとは何をいつ、どうやって学ぶかを「学びの地図」に計画します。
その際に、インストラクションを一緒に確認して、集団で学ぶ場合の時間も計画の中に忘れずに入れていきます。
木曜日を例にとると、
かずを個別で学ぶ子はそこで、地図まなびぃは3・4年生の学習、食まなびぃは5・6年生の学習です。
つまり、5・6年生は2時間目の後半以外の1時間半は、自分の裁量で学んでいくことができます。
さらには地図の中のゴールを数値化することも忘れません。
どうして数値化するの?
まーくん
あお
ゴールを明確にするためです。数値が甘いと、ゴールがぼやけます。
1週間の学びを終えたら、金曜日にグループリーダーと振り返りをします。
これは、ある時のボクとある子との会話。
「今週どうだったー?」
「かけ算の筆算が先に進めなくてさ、ほんとどうしよう。」
「どんなところでつまづいているの?」
「かけ算はできるんだけど、かける数に間に0が入る時の計算わからなくなるんだよね。」
「そっかぁ、来週、ちょっと一緒にやってみる?ボクもどの部分でつまづいているのかを一緒に把握したい。」
「うん、いいよ!」
「今4年生じゃん、この「現在地の把握」ってここから伸びてくるスキルなんだよ。だから一人じゃ難しいかもしれない。そこはいくらでも手伝わせて。一緒に「今」をつかんで、どう学ぶかを考えよう。」
「ありがとう、あおちゃん」
「とんでもない、来週のめあてが決まったね。」
「うん、『現在地を一緒につかんで、何が変わるか見てみる』って書いておくね。」
「何が変わるか見てみるって、楽しみだね。」
こんなやりとりをしながら、週の振り返りを全員としています。
時間はかかりますが、開校以来欠かしたことがない振り返りの習慣です。
そこまで細かくやるんだね。
まーくん
あお
そうなのよ、実際に子どもの把握をしっかりとやっていくことが鍵なんだ。
自由進度学習も自立学習も、把握が甘くなり、挫折をする先生が多いです。
子どもの様子を捉えきれないから、一斉授業に戻ったり、基礎の反復練習をして安心しようとします。
- またみんな同じに戻るんですか?
- 反復練習はchat-GPTがある時代に本当に必要ですか?
あお
異論はあると思いますが、真剣に考えていかないといけない時期に来ているはずです。
ボクらは前に進みます。
子どもたちは自由に学んでいく力を持っています。
学びのツールの軸
フィッシュボーンに代表されるような、考え方の思考法ではありません。
自分の学びを実行するためのツールです。
実際に考えるのは、子どもたちは学びの中でやっていきます。自分たちの学びを実行するために、忍耐力やモチベーションが必要になります。
そのためのツールは、今のところ8つのツールに集約されていきます。
あお
この詳細は、ヒミツキチ森学園の見学で説明しています!ぜひどうぞー
見学日は割と柔軟に設定することができます!
関係性の軸
子どもたちは自立学習と言っても、完全に個別に学んでいくわけではありません。
周りの友達との関係性が子どもたちの学びを加速させていきます。
一緒に学ぶとふざけちゃったり、力がつかない子はいないの?
まーくん
あお
そうなることもありますよね。だからそこにはフィードバックを返したり、そうならないための関係性の構築を進めています。
ヒミツキチ森学園には、テーブルグループという異学年グループがあります。
イエナプランでいうテーブルグループは、異学年混合クラスの班のようなイメージですが、ボクらのテーブルグループは1〜6年生までが混ざった混合グループです。
このグループで、週に2回ブロックアワーの学びを行っています。
上の学年の子たちが学習内容を教えるシーンがあったり、ふっと一息抜ける瞬間があったり、異学年で学ぶ価値は、ここにもあるなぁと思っています。
そこにインストラクションという軸が入ってくることで、違う学びのグループがそこらじゅうにあり、関係性が深まっていくのです。
孤立化しない仕掛けがあるんだね!
まーくん
境界線の軸
自由進度学習をある程度学んできた先生が当たる壁としては、「一斉授業の方がいいんじゃないか」ということだと思うんです。
子どもたちは一斉に学ぶことを楽しみ、一斉に学びが深まる機会が必要…、自由進度学習を実践して半年してわかったことです。
だから、プロセスの途中なんです。
今回、自立学習をしながら感じることは、「インストラクションの学びの幅」です。それは2種類あるのだと思っています。
- 事前に用意していたインストラクション
- 子どもの学びを加速するSEL的要素のインストラクション
事前に用意していたインストラクションは、従来の授業のミニレッスンに近い感じです。
事前に学ぶ内容の焦点が定まっている場合、必要なインストラクションを先生は構成します。学ぶ内容にフォーカスを当てているので、国語や算数などが学びの中心となってくるでしょう。
ボク自身はヒミツキチでも作家の時間を続けているのですが、この作家の時間と国語の文法を組み合わせながら、学ぶ内容を精選しています。
そして子どもたちの様子から必要性を感じて行うインストラクションもあります。
今の学びを加速するSEL的要素強めのインストラクションがそれに当たります。「学び方を学ぶ」内容になるでしょうか。
- 自分の中のリミッターを外しながら学ぶには?
- 効率よく休憩を取るには?
- 細かく分解しながら学ぶには?
これらのことは、自分たちで学ぶ自立学習があってこそ、教えることができるものだと思っています。
あお
8つのツールに戻っていきますね!
また、プロジェクトアワーとの境界線も溶け出していきます。
ブロックアワーの中には、プロジェクトアワーの内容がどんどん入ってきます。
プロジェクトアワーの中にラーニングプロジェクトという「探究学習」があります。
その中で一人でできること(例えば、調べ学習や動画編集など)はブロックアワーの中にどんどん入れています。学びが入ることで、どんどんブロックアワーの学びが増えていきます。
プロジェクトアワーの時間には、みんなでやれることに集中するために、こうやってブロックアワーを活用しています。
境界線がどんどんぼかされていくね!
まーくん
学びの把握の軸
自立学習での肝となる部分です。
あおちゃんって、パソコンでブロックアワー中何してんの?
監視でしょ?
子どもたち
あお
してないわ、そんなこと。
子どもたちと笑いながら話していますが、ボクらが学びを把握するためにいくつか意識してやっていることがあります。
一つは、AIなどのビッグデータの力を借りること。
使っているe-boardでは、今子どもたちがどの問題をどれぐらいあっていて、もしくは間違っていて次に進んでいるかを掴むことができます。
子どもたち一人ひとりにひっついて記録しないととらないデータが、もうそういった学びのツールを使うことで集めることができるんですね。
そのビッグデータをもとに、今その子に何を伝えようか、どんな状態なのか多角的に見ながら、アプローチを練っています。
あお
自立学習にはこのAIの力が絶対に必要です。
これなくては個別最適化は図れないと思っています。
それに加えて、ボクらが主観的に感じるその子のデータというのもを記録していくようにしています。
「あれ、今日は時間のロスなくスタートできているな。何がそれを生んでいるのだろう。そうか、聞いてみたら、朝のヨガが気持ちよくていいスタートが切れているみたいだ。彼にはマインドフルネスのアプローチが効果的なんだな」
「あの子とあの子が一緒に学んでいる。これは今までなかったな。お互いの学びに干渉しすぎず、いい具合に進めることができているなぁ」
こういった主観的なアプローチはしっかりと記録し、同じグループリーダー同士で共有できるようにしています。
Notionを使っています
また、通知表で評価をしない代わりに、ボクらは学習進度表というのも記録しています。今、自分たちがどこまで進んでいるか、この先何をやる必要があるか、子どもたちと共有しながら進んでいます。
あお
この子どもの学びの実態把握には、時間をかけて実施しているところです。
自立学習の実践で見てきた課題と今後の展望
ここまでは自立学習の実態を話してきました。
まさに公立でやっていたことを超えて、新しいことに挑戦しているんだね。
まーくん
あお
じゃないと、オルタナティブに来た意味がない。学びを進めていることは意識できているよ。
成果としては、
3年目から、少しずつインストラクションを作りながら、自由進度学習から自立学習へと移行していっていること。それに伴い、子どもたちの学びもだいぶ活性化されているなぁと思っています。
子どもたちは、午前中に主に2時間ブロックアワーをやっているのですが、その際に集中力が途切れることなく、取り組めるようになってきました。
さらに細かくみていくと、いい具合に休憩を保ちながら学んでいるのもわかります。
みんなで学ぶインストラクションの時間が、ちょうど学びの潤滑油のような存在になって、休憩がてら皆で学んでいる感覚も子どもたちの中にあるようです。
4年目からは、まなびぃと言って、理科・社会・家庭科などを1つのテーマで横断しながら学ぶ枠組みが生まれたのですが、それによって、5・6年生であれば「食」をテーマに横断して学ぶことができています。
これは単元で分かれていた従来の学習と違って、必要なことを必要な繋がりで学ぶことができているので、一定の効果をあげていると言えるでしょう。
課題と感じていることはあるの?
まーくん
あお
もちろん、まだまだだなぁと思っているよ、たくさんあります。
第一に、子どもたちが「学ぶ時間が足りない」と話していることです。
本来は1日かけて小学校では学んでいるのを、ボクらは半日以下の時間で取り組んでいます。必然的に高学年になった時に、ゆっくり学んでいては、間に合わないのです。間に合わない中で、インストラクションなどをやることで、
「足りないのよ、時間が」
と叫んでいる子たちもいます。
バランスを取るのは、先生の役目でもあり、自分たち次第でもあります。
ただ、この辺りのトータルの学ぶ量については、もっともっと試行錯誤が必要になります。
さらには、まなびぃは、まだ難しくボクも捉え切れていません。
「どう学ばせたらいいんだろう」
そうやってもう一人のグループリーダーも苦しんでいるところです。
ただ、1、2年やってみないと最適解は見えてこないと思っているのも事実。
まなびぃは強化横断型の学びをしながら、探究のための素地をつくる。探究者のサイクルと、科学者のサイクルを回し続ける学びです。
あお
ここが超えられたら、改めてオルタナティブスクールの学びの基本形が見えてくると思っています。
『学び合い』「自由進度学習」を超えての自立学習 まとめ
自立学習についてまとめてきました。
- 自立学習は、『学び合い』「自由進度学習」のプロセスの先にある、自ら学ぶことをベースにした学習
- AIによる診断など、子どもの把握のためには新しい学習ツールを使う必要がある
- インストラクションも含めた「集団」⇄「個」の学習バランスが大切
ここまで聞いてきたけど、いまいち自立学習の感覚がわからない人はどうしたらいいのかな?
まーくん
あお
そんな方のために、2つの方法があります。
ヒミツキチ森学園では、学びの場を作っています。以下は終わってしまいましたが、今後も続いていくものです。
ボクらグループリーダーが研修担当する少人数制の学びの場です。
こちらでは、ブロックアワーやプロジェクトアワーと共に、聞きたいことをたっぷりと聞くことができます。
ヒミツキチの校舎でやるんだねー!
まーくん
直近だとこんな企画も
もう1つは学園見学です。
ヒミツキチの見学は割とフリーで行っているので、実際に自立学習している子どもたちの姿が見たい方は、こちらにお申し込みください。
実習という形での1日、1週間単位でのグループリーダー体験も受け付けています。
ぜひぜひ待ってますよー!
まーくん
あお
それでは今日も良い一日を!
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